以上の原則に基づいて特殊法人を具体的にどう改革するか。小泉内閣の特殊法人改革で最大の問題になっている道路四公団の問題から始めよう。
この問題を考えるには、わが国の道路行政が完全に行き詰まっているという認識を明確にする必要がある。わが国にはトータルな交通運輸政策がなく、狭い島国で旧運輸省は空港、港湾、新幹線を、旧建設省は高速道路などを、それぞれ局ごとに作れ作れでやってきた。その結果、港湾は一〇九三、空港は一〇〇ヶ所、新幹線は現在工事中を含め総延長二四六五キロメートル、高速道路は六六〇〇キロメートルとなったが、ごく少数の路線、施設を除いては、すべて不採算の状態で、各省庁の利用予測は他の公共事業と同様、大きく狂っている。
これを抜本的に改革するには、まず、国土全体の将来像を作り、その中で交通機関全体の有機的、機能的組み合わせに自然環境、経済・社会のあり方を長期的に考慮した「国土と交通のあり方」の基本構想を策定することが必要だ。そして、建設は、原則として政府自らが指揮をとったり金を出したりするのではなく、市場経済と社会が必要な限りにおいて建設、維持することにする。
こうした原則にたって高速道路建設計画を全面的に見直し、向こう二〇年間の建設凍結(モラトリアム)を決定するのだ。なぜなら、今後大きな需要の増加は見込めないし、これ以上、自然環境、生活環境を犠牲にすることとはできないからだ。さらに高速道路を造り続ければ、社会資本としての経済性が失われるばかりか、マクロの社会・経済活動にコスト高というマイナス効果をもたらす。とくに、日本道路公団、首都高速道路公団、阪神道路公団、本四連絡橋公団、アクアラインなどは財政破綻を来している。このまま放置すれば悲劇的事態に至るのは明白である。
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