構造改革のための25のプログラム
第一節 官企業の全廃がもたらす経済の覚醒
プログラム四
日本道路公団の借金は20年で償却する

 日本道路公団については民営化せよとの意見もあるが、性急な民営化論は正しくない。なぜなら、公団には多額の料金収入が入ってくるため、新規建設を止め利権による収奪システムを再編しさえすれば、国民の大きな負担で作られた、この道路という資産は将来(孫子の世代ではあるが)日本経済に貢献することができるからである。
 近い将来の民営化となれば、二七兆円(平成一三年現在)もの借金を引き受ける民間組織はあり得ないから結局、国鉄清算事業団方式のように、いったん別枠の、名実ともに国民の借金の形に付け替え計上せざるを得ない。民営化された会社の「株」は、現状ではマイナス評価だから全額政府保有となる。これでは、いずれにしても民営化とはいえないし、特殊法人廃止の趣旨とも矛盾する。
 しかも、形式上の経営形態が株式会社となれば、経費方針、経理、財務状況について、原則的に国会は口を出せない。法令で経営・経理の内容を規制することは構造改革の趣旨にも反する。
 これでは、最終的に二七兆円を国民の負担にされた国鉄の轍を踏むことになりかねない。また、現状では採算のとれる路線は東名、東北道、名神などに限られているので、経営の分割は極めて困難であるし、一方、基幹道路となった多くの不採算路線を営利的観点からのみ捉えることにも問題が出よう。結論的に、日本道路公団の民営化は一五年早いのだ。
 では、国民の立場からどうしたらよいか。現状の財務状況を基に改革の方向を探ってみよう。
 道路公団の経営は、国の補助金を除き、収入は二.二兆円(主に通行料)しかないのに借金返済は三.三兆円という、恐るべき”サラ金地獄”状態にある。にもかかわらず、厚かましくも約三兆円の新たな借金をして道路を作っている。別の言い方をすれば、収入をまるまる充てて新規道路を造り、借金返済のために借金をし、それでも足りない返済部分に税金を注ぎ込んでいるのだ。
 この”地獄”状態から脱出する途は、一刻も早く日本道路公団を廃止し、財務省の直接管理とし、同時に新規道路建設を全面ストップすることから始めなければならない。財務省の直接管理となる新「組織」の仕事は、社起因返済と既存道路の維持・管理だ。
 返済すべき借金額は年間で三.三兆円もあるが、これは次のような方法で捻出できる。すなわち、まずは料金収入などの二.二兆円。次に公団ファミリーの道路サービス機構、ハイウェイ交流センターの両財団法人等を廃止し、彼らが独占している収益事業を直接管理することによって四〇〇〇〜五〇〇〇億円の収益を見込む。さらに、公団が保有している遊休土地および支社等の土地資産(購入価格一.五兆円余り)の売却を行い収入を確保することも必要である。その他、子会社・孫会社の整理などによる収入も計上できる。
 これでも完全な返済には足りないので、当分の間、七〇〇〇〜八〇〇〇億円程度の借入金(公団債等)が必要となろう。これは当然、漸減していく。
 新規工事の中止と補修等でのファミリー企業への高額な工事発注を止め、天下り、高額退職金の廃止、人件費の減少、管理費の軽減等によって、収支は少なくとも年間二.六〜二.七兆円は改善されると考えられる。今後、維持・補修事業は公正・厳格な競争入札で発注し、現在ある一四ヶ所の地方支社、七五の工事事務所、九八の管理事務所、八ヶ所の技術事務所は大幅に縮小する。総裁以下の高級役員はすべて不要となる。もちろん、毎年注入されてきた約三五〇〇億円(平成一一年度)の税金も必要なくなる。