構造改革のための25のプログラム
第一節 官企業の全廃がもたらす経済の覚醒
プログラム五
公団のファミリー企業から資産を回収する

 さらに、第二章第三節で述べた公団ファミリー企業の不当な株売却をやり直して資産の回収をはかり、そのうえで、(財)道路サービス機構と(財)ハイウェイ交流センターを解散させることが必要である。これで一兆円から一兆数千億円が国庫に戻ることになろう。
 以上、私が提案した抜本的改革を実行すれば、日本道路公団の借金は一五〜二十年間で完済の目処が立つ。この時点で、はじめて民営化を俎上に上げ得る状態となろう。
 この際、借り入れた財投資金の返済方法については規則の変更(繰り上げ返済の制限など)が必要となろう。また、首都高、阪神高等の改革との関連もあり、流動的な要素は少なくないが、おおむね改革の基本線は以上の方法以外にないであろう。
 日本道路公団に注ぎ込まれてきた国費(税金)は最近の一〇年間で約三兆円であるから、民営化の際には、今後さらに投じられる国費も含め、それを上回る株価評価が達成されるべきである。その後は、民営化してその利益からあがる「税収」に期待するか、民営化せず年間二兆数千億円の道路収入を直接国庫で確保する途を採るか、それとも通行料金を下げることで国民に尽くすか、選択肢は広がる。
 大きな問題は日本道路公団がかかえている八八〇〇人の職員の雇用問題である。これらの職員は、サービスエリア等の管理業務が増えるとしても、その六割を削減すべきだ。その方法は自然減と「特別保証退職制度」のようなものを新設して処遇する以外にない。しかし、一方では一連の真の構造改革の進展のなかで国民の将来への不安が薄らぎ、金融や住宅建設・不動産などの分野を中心に経済に活力が生じてくることを認識すべきである。
 一方、道路の補修・メンテナンスなどの工事を行うファミリー企業の清算・整理後の運命については、公正な競争入札に適応する民間の生存競争が発生するだけである。また、現場工事業者にとってはむしろ中間搾取が減るメリットが生じるだろう。
 高速道路の新規建設事業がなくなることによってゼネコンに影響は出る。しかし、将来のゼネコンの行き方としても、行政の下請け、政治のサイフとして公団や役所に玩ばれる存在ではなく、行政から離れて大きく創出される住宅及び都市整備事業などの主役として経済のリード役を果たすべきである。この意味でゼネコンは体質と構造の転換を迫られる。
 なお、この「プログラム五」に挙げたファミリー企業の整理方針については、道路公団に限らず、政府系官企業すべてについて、基本的に第二章第三節に述べた通り、整理・清算または純資産方式による処分を行うべきである。