現在、公益法人(財団法人、社団法人)は国、地方合わせて約二万六〇〇〇団体あるが、このうち事実上、官公庁の天下りや政治の利権を目的としていると見られるものは約一万法人である。この約一万団体を廃止し、子会社・孫会社も整理・清算すべきだ。
それらは税金でつくられたものといってよく、そのまま民間会社化するわけにはいかない。また、民間会社化したとしても、そもそもこうした系列会社は天下りがおこなわれているからこそ役所が仕事を割り当てているのであって、そうした関係が切れれば仕事は来なくなる。「民営化」は現実的ではないのである。
約一万の公益法人を廃止した場合、子会社・孫会社等を含め約五〇万人の職に直接の影響が出ることになるが、このうち約二〇万人は官公庁からの再就職(天下り)による役員であるから生活には困らない。対策が必要な失職者は約三〇万人と考えられる。この対策については後に述べる。
次に、八四ある認可法人は、子会社等を含む就業者数が約一〇万人、うち役職員が約九万人という大所帯で、事業規模は全体で十数兆円に達する。にもかかわらず納税はなきに等しいほどである。認可法人のうち、日銀は政府と独立した機関として、日赤は民間の国家的機関として確固とした位置付けを行うべきである。認可法人も特殊法人と同様、経済活動に関連する団体は廃止し、研究開発などの事業は大学や民間の機関にまかせるべきだ。政府は必要に応じてヒモのつかない支援を行えばよい。
特権的な地位にある公益法人、認可法人等の廃止は、計り知れない社会的、国家的メリットを生む。
第一に、不当に支出されてきた莫大な税金が救済される。たとえば、政府系公益法人の役員の報酬や退職金は特殊法人並みに高額だ。公益法人からさらに孫会社・曾孫会社(丸投げ先)と天下りルートがあり、そこでも巨額の報酬・退職金が支払われている。官公庁からの委託費や補助金によって公益法人、認可法人で養われている官公庁出身(課長職以上)の役員は図表4−1に示すように二万一七〇〇人余りもいる。
第二に経済活動の素材を市場に戻し市場に活力を与える。公益法人のビジネスは官公庁の権限と権威、信用、資金を後ろ盾にしているため、民間には太刀打ちできない。
第三に市場での民間企業の活動量が拡大し、その活動に応じた納税によって国民福祉の増進に貢献する。公益法人は税の優遇措置を与えられているが、多くの事業が民間に開放されれば税収の増加が期待できる。
第四に不当な得点や特権が消え、社会に公平感と勤労欲が甦る。さらには後述するように、税制の改革によって本来の公益に資する社会的活動である財団法人やNPOなどが民間の企業や篤志家などに支えられ、真に社会による社会のための社会が形成されることになる、という変革も期待できる。
図表4−1 公益法人の理事のうち公務員出身者のいる法人(平成9年度)
国 家 公
務 員 出
身 理 事
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|
法人数
|
理事数
|
(うち常勤)
|
(非常勤)
|
合 計
|
2,483
|
7,080
|
1,742
|
5,338
|
国 所 管
|
社 団
|
970
|
2,505
|
682
|
1,823
|
財 団
|
1,513
|
4,575
|
1,060
|
3,515
|
都 道 府
県 公 務
員 出 身
理 事
|
|
法人数
|
理事数
|
(うち常勤)
|
(非常勤)
|
合 計
|
5,443
|
14,633
|
3,591
|
11,042
|
国 所 管
|
社 団
|
2,069
|
4,661
|
1,423
|
3,238
|
財 団
|
3,374
|
9,972
|
2,168
|
7,804
|
全 国 公
益 法 人
数
|
|
社団法人
|
財団法人
|
合計
|
国 所 管
|
3,583
(3,776)
|
3,284
(3,579)
|
6,867
(7,355)
|
都道府県所管
|
8,771
(8,779)
|
10,059
(10,178)
|
18,830
(18,957)
|
合 計
|
12,296
(12,555)
|
13,309
(13,757)
|
25,605
(26,312)
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(以上、出所:旧総理府)
注:上段は共管法人の重複を除いた実数。下段の( )内は、共管法人を含む延べ数である。
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