構造改革のための25のプログラム
第一節 官企業の全廃がもたらす経済の覚醒
プログラム九
地方公社と第三セクターを清算・整理する

 国の行政企業に倣って、地方においても行政企業としての「公社」「特殊法人」「第三セクター」が一九六〇年代以降急速に増加した。前述の公益法人等とは別に、都道府県、指定市、市町村、特別区にわたって作られているこれらの行政企業は、なんと一万一三五(社)も存在している。構造も役割も、国の場合とほぼ同じだ。
 地方自治体の財政破綻を招いた重大な要因もこれらにあるし、経済、社会全体を歪め疲弊させた元凶の一つもここにあるといってよい。
 これらの多くは、まさしく地方公務員の天下り先として活用され、公費助成の下に生産、流通、販売、管理など広範なビジネスを展開している。福祉、教育、スポーツ、文化、娯楽、コンベンションなどの分野においても大きな事業活動を行っている。
 土地、資本、設備投資、利子、納税の負担がほとんどなく、立ち行かない経営に対する個人責任はまったく問われない。東京都だけでも外郭団体に対する都民負担は年間百億円単位のものがある。それが、また地域から仕事を奪ってしまう。”公共の事業”が、いかに地域から経済を壊してきたかは各所に述べたが、卑近な例を私が住んでいる東京から一つだけ紹介してみよう。
 私の事務所のすぐそばに東京都世田谷区が区画整理事業で建てた高層ビルがあり、そのいくつかのフロアを区の外郭団体が利用している。その一隅に、なんとタダで印刷をしてくれる所があるのだ。「住民サービス」というわけで、紙さえ持っていけばチラシやビラ、ちょっとした新聞の印刷ができる。二〇〇枚までというが五回に分ければ一〇〇〇枚、一〇回なら二〇〇〇枚といくらでもタダである。これでは近所の小さな印刷屋さんの仕事はますます減ってしまう。
 類似のケースは日本全国枚挙に暇がない。地方公共団体も「純然たる行政事務以外は民間で」の原則を肝に銘じてほしいものだ。
 地方公社と「三セク」および、その子会社等の廃止、清算も、国の改革と共に大胆に進めることがきわめて重要である。