税制の抜本的改革は不可避である。国民すべてが相応の税を負担するのは当然であるが、基本的には経済活動が主たる税の負担者とならなければならない。そして、その富をもって豊かな福祉、教育、医療、治安、防衛、外交、文化を支えるのである。
本格的な税制論議は本書の目的を超えるので、ここでは真に社会的に必要な活動を支えることができる税制についてのみ触れよう。
憲法第八九条は民間の私的な慈善事業や教育活動などに公金を支出してはならない、と規定している。つまり、福祉や教育は国(公)の仕事であるから、その費用は税金で賄うべきだと述べるとともに、民間の慈善活動に権力は介入してはならず、また利用してはならない。それは、あくまで民間(社会)が支えるものでなければならないといっているのである。
米国のような民主的イニシアティブを重んずる国においては、税制においてもこの考えが貫かれている。つまり、国民は負担額のすべてを政府に納めるか、あるいは一部を社会団体に寄付するか、選択できるようになっている。具体的には、公益団体(NPO)に対する寄付は税額から控除され、事実上、税金の納付と同じ扱いとなる。自らの経済活動の果実を自らの自由な意思で自らの社会を作るために”納付”できるのである。
わが国においても、市場経済の形成とともに、市場の成果の一部を自らの国づくりのために自らの意思で処分する税制が求められる。
|