構造改革のための25のプログラム
第二節 権力の市場からの退却
プログラム十四
公共事業長期計画を廃止する

 第三章で問題点を詳しく述べた、わが国特有の”公共事業”の早急な廃止もまた必要だ。
 国が直接手掛けることが許されるべき社会資本整備は(離島や遠隔地などの例外を除いて)、新幹線を含む幹線鉄道と、高速を含む幹線国道、主要空港、重要港湾、さらには電信電話などの交通通信、それに防衛、治安上の基幹的整備に限られるべきだ。しかも、これとても、市場経済と国民生活にとってコスト上のメリットを生ずることが絶対条件である。

 交通・運輸インフラを例にとれば、わが国は平野が少なく、起伏に富み、人口が多く、細長い列島である。こうした自然条件と地域的特性を重視した総体的見地から、その整備を考え、陸、海、空を機能的に関連させた、より効率の高い交通体系をつくらなければならない。
 北海道から九州に至る列島縦断の幹線鉄道や幹線道路は、すでに整備されている。重要なのは、これに空路の開発や新幹線をどのように有機的に位置づけるか、である。どこもかしこも開発するなどということは、もはやできない。幹線道路、幹線鉄道を横につなぐ支線あるいは都市地域の交通網についえは、地方の経済界など民間のイニシアティブが発揮できるよう、民間の要望に応じて法制上の整備をしておけばよい。幹線の交通インフラも原則として「国営」を止め、民間企業に移管すべきである。
 航空交通については、せいぜい北海道、東北、関東、中部、北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄、の一〇ヶ所と一部離島に国内空港があればよい。大きな国際空港は現在のところ、東京圏、大阪圏、九州圏にあれば充分だ。海上交通もほぼ同様である。
 いま、わが国では、国がこれらのほかに、港湾および周辺開発、漁港整備、ダム、橋、都市開発、区画整理、農道、林道、治山・治水、農業構造改善・土地改良など多岐多様な土木事業を実施しているが、これらの大部分は政府が所管している結果、政治家と中央省庁の裁量権が働き、予算が無駄に使われている。これを改めるには、地方の工事計画や発注は民間の責任において行うように改めるべきだ。行政はあくまで協力者にとどまるべきであって、事業主体となるべきではない。公共事業の全面見直しによって巨額な公共事業支出は大幅に削減することができる。少なくとも当面、国、地方、特殊法人を合わせて年間に二〇兆円程度減らすことは困難ではない。
 原則として残すべきは、文教施設、医療・社会福祉施設、一般道路設備、特定の治山・治水事業、地方自治体に必要な事業、その他下水道整備や緑の保全など、生活の安全と自然環境を守るための事務事業である。しかも、これらの事業といえども、利権や天下り団体を介在させず、特別会計を用いることなく、税金で直接実施するようにしなければならない。