構造改革のための25のプログラム
第二節 権力の市場からの退却
プログラム十七
徹底した地方分権を断行する

 中央に集積された予算が公共事業と補助金によって企業や業界・団体に配分されるシステムは、既存の政治権力を支え、政治権力への経済を隷属させる。この財政システムの下で、政権にある政治家は地方と中央権力の仲介人となる。
 このようにして、政治家の”顔”は”金”をもたらし、その金の一部が今度は”顔”を支えるのである。こうして政治家に還流した税金は、すでにみたように表に現れただけでも二二〇億円である。この不当な支出をなくすには、政治家の”顔”をなくすことが必要だ。もちろん、無駄な公共事業が行われないため、無駄な補助金、委託事業費などが支出されないためにも、である。
 地方公共団体の総数は三二七六である。たいていの市町村には、ひときわ目を惹く庁舎が建っている。立派な議会棟や市民センター、博物館などとともに、多額の維持管理費と運営費が支出されている。ある市長は「市町村の数は一〇分の一で十分」と言っている。かりに約三三〇〇の市町村を一〇分の一の三三〇の基礎自治体に統合し、全国を一二程度の州(都、道)政府に分割する「道州制」を導入するなら、行政経費は大幅に縮減される。ある資産によれば十五兆円の経費節減が可能だという。
 ちなみに、地方公共団体が支出した平成一〇年度の物件費は七.八兆円、維持補修費は一.〇九兆円、議員報酬等は一.四六兆円、人件費は二七.〇五兆円である。地方自治体の整理統合と併せ、行政経費は全体として事業系から、福祉、医療、教育中心の事務系へ移行させるべきだ。さらに、公共事業経費や”三セク”、外郭団体等を全面的に見直し、その無駄をなくすべきだ。それは地方経済の活性化に結びつく。
 現在の地方公共団体では、ある部分では国以上にズサンな財政運営が行われている。特別会計が膨張し、特殊法人や公益法人、第三セクターなどの不要な”サービス”と、議員、役人の特権がまかり通っている。行政監査制度は存在しているが、いかにも不十分だ。利権や不正に対するより厳しいチェックと責任追及の機能を果たすようにしなければならない。
 地方分権では地方の財政自主権の確立が重要である。財政の権限を中央政府に押さえられている現状から脱却するため、抜本的な税制改革を行い、その中で法人税、所得税など主要な税の徴税権を地方に移管し、地方独自の自主的財政運営を保障しなければならない。そのさい、地方公共団体のあいだに存在する基本的格差を是正するための合理的な「財源調整基準」は必要だ。
 それは、人口、面積などの他、福祉、医療、教育、自然保護などの価値観を導入した、箇所付けや事業指定のない直接配分によるものでなければならない。福祉施設などを多く受け入れる自治体や、自然を守る自治体、さらには都市住民のセカンドハウスや菜園づくりを受け入れる自治体、自然の食材を提供する自治体などには、それ相応のメリットを得られるシステムが必要であろう。