構造改革のための25のプログラム
第三節 国家予算の半減
プログラム十九
国債の新規発行をゼロにする

 さて、前項では基本的に会計の整理を中心に歳入・歳出の縮小について述べたが、今度は、それとは別の角度から財政の改善と構造改革の課題に触れてみよう。
 すでに述べたように、補助金及び公共事業費の削減によって早期に三〇兆円の歳出削減を実現できる。また、最優先課題として断行されるべき政府系公益法人や特殊法人、地方公社など、官企業の廃止は市場の活性化という重要な効果を生む。
 これらが独占している膨大な事業が順次市場化し、経済全体に相乗的活力を発揮するからである。これによって三年後以降には顕著な税収の伸びが期待できる。
 従来、官企業であるがゆえに免除されていた税金分と合わせて、五年以内に、年間三〇兆円程度の税収増が実現できよう。三〇兆円の削減と三〇兆円の税収増で計六〇兆円の調整幅ができることになる。このうちの三〇兆円によって新規国債発行ゼロを実現できるのである。
 さらに、この後の健全な市場経済の発展と「簡素な政府」実現の中で大幅な歳出縮減と税収の増大を実現することができれば、必然的に国の借金は減少の軌道に乗る。同時に行政企業と利権の多くが姿を消すことによって国民の公共料金と税金負担が大幅に軽減される。
 この間に地方分権を進め、税配分や徴税権の大幅な地方への移転が行われるべきだから、そうなれば当然、国レベルの予算規模は実際には前記の数字より大幅に縮小されることになる。
 一〇年後のさらなる目標としての国家予算の規模は一〇〇兆円を限度とすべきであろう。つまり、国税による歳入一〇〇兆円以内ということである。ここで、はじめて真の意味でのプライマリーバランスが回復することになる(この点で年金の扱いが問題である。私は年金は基本的に税によるべきと考えるが、ここではそれを含めない)。
 さて、当面する平成一四年度予算の編成においては、以上の立場から少なくとも二〇兆円の公共事業・補助金の削減を実行し、一〇兆円を構造改革のコストに投ずるべきである。そして、新規国債の発行額は、(小泉内閣が目指す三〇兆円ではなく)二〇兆円以内に抑えなければならない。そのさいには、いわゆる「成長率」が三〜五%程度下がることも宣明し(マイナス成長)、これは景気の指標とは異なるものであることも合わせて明らかにすべきであろう。
 わが国の財政構造の現状からすると、(すでに述べたように)財政支出が減少すればGDPも下がり、したがって、成長率も下がるからである。このさい日本国の癌の病は加速度的に進行しているのであるから、煮え切らない改革はかえって事態を悪化させることを付言しておく。