平成十二年七月六日提出
質問第七号

徳山ダムによる発電に関する質問主意書

提出者  石井紘基

徳山ダムによる発電に関する質問主意書

 徳山ダムの事業計画によれば、徳山ダムの建設費のうち電源開発株式会社(以下、電発という)が18.8%を負担し、別途発電所を建設して40万キロワットを発電するとしている。ここで発電する電力は100%中部電力株式会社(以下、中電という)が受電するという(1996年の中電株主総会)。
 また中電は徳山ダムの下池として独自に杉原ダムを建設し、杉原発電所を建設して2万4000キロワットの発電を行うとしていることへの対策は、緊急を要すると考えられる。
 従って、次の事項について質問する。

 これらの費用の総額(徳山ダム建設費負担分+徳山発電所建設費+杉原ダム建設費+杉原発電所建設費)は約1500億円(=1985年単価)ときいているが(1996年中電株主総会)、資源エネルギー庁として把握されている数字を示されたい。また、予測される電源開発単価も示されたい。(揚水発電分と自流式発電分を分けて試算するべきであるという見解であれば、徳山ダムの各方式の最大出力を示し、それぞれ分けた形で示されたい。)また、予測される電源開発単価の妥当性を検討するため、全国の発電方式別の電源開発費の実績・現状を示されたい。なお、「発電方式別」とは、火力・原子力・風力等資源エネルギー庁で把握するすべてのものを含むが、とりあえず統計として現に存在する資料で構わない。水力発電についても、自流式・揚水式・混合揚水式に分類することを求めたいが、とりあえず統計として現に存在する分類による資料で構わない。
 株主総会での聞き取りをもとに算出すると、ここでの電源開発費1kwあたり約三五万円となる。これは1985年単価をベースにしたものなので、実際はこれより高価になることが予想される。

  資源エネルギー庁は、揚水発電としての妥当な開発費の上限は二○万円/kw程度と言われた(3月10日)が、これと比較してすでに遙かに高く、電発として推進するには不安であるが、これについて見解を示されたい。
  中電は、主要電源開発計画に風力発電などの新エネルギーを入れていない。風力発電などの新エネルギーへの投資に消極的な理由を「高コストで経営的に引き合わない」としている(1998年中電株主総会)。しかし三重県青山高原での風力実験施設での電源開発費は1kwあたり三○万円弱である。とすると、徳山ダム−杉原ダムによる発電は「コスト面で引き合わない」ことになり、中電としては徳山ダム−発電所からの受電には否定的・消極的になると考えられるが、認識はいかがか。

 「コストが多少高くても水力は二酸化炭素排出量が少ないので地球温暖化防止に役立つ」という水力発電推進論が存在するが、4月6日に世界自然保護基金(本部スイス)の発表したところでは、水力発電の二酸化炭素排出量は1kw時あたり33gで、風力発電の1kw時あたり20gの方が格段に排出量が小さい。また熱電併給が可能なバイオマス発電ではさらに二酸化炭素排出量を小さくすることができる。「環境のために」と称して巨大なダムを作り絶滅危惧種を絶滅に追いやり自然生態系を破壊するに足る根拠は存在しない。
 一方、自然保護団体からは、徳山ダム予定地に生息するイヌワシ・クマタカへの大きな影響、及びその影響の軽減・回避の有効な方策を立案するだけの調査すら行われていないことに強い懸念が示されている。
 将来的なエネルギー供給計画を考える際に、環境保全の観点は無視しえないと思われるが、徳山発電計画における環境面の問題をどのように認識しているか。
 中電の「平成12年度 電力供給計画の概要」によれば2008年に徳山発電所より電力の供給を受けるとなっている。しかし資源エネルギー庁によれば、電発から中電への売電単価は未定であり、民間の相対契約によるのであるから両者の経営判断によるので同庁として介入できるものではないという(3月10日)。
 一方、電力価格の自由化が進められ、民間会社の中電としては平均的な価格を大きく超える高価な電力を買うという経営判断をなしえないことは明白である。

  「徳山発電所で発電された電気はすべて中電が買う」ことについて契約は存在するのか。あれば契約内容とりわけ価格面及び債務不履行の場合の損害賠償等について明らかにされたい。
  拘束力ある契約が存在しないとなると、中電が買電を拒否することもありうることになるが、その場合、電発は、投資回収を可能にする価格で電力を買ってくれる他の受電先を確保しうるのか。具体的なあてがあれば示されたい。
  売電先が存在しないか、または投資を回収するに足る適正な価格より低い価格でしか売電できないとなった場合、電発に発生すると考えられる巨額の赤字はどのようにして処理するのか。
  現在において、徳山ダム−発電所による発電が高コストとなることの蓋然性は否定しえない。電発が資源エネルギー庁の管轄下にある現時点で、電発は徳山ダム建設事業認定処分における事業者となっている。
 仮に「赤字は発生しない」ことを前提として徳山ダム建設事業に参加しているならば、赤字が発生したときの責任は誰が負うのか。もし電発の赤字に公的資金を投入するようなことになれば、資源エネルギー庁の責任は大であるが、この認識はいかがか。
  電発民営化は、資源エネルギー庁自身が「大きな関心をもって見守る」(3月10日)と言わざるをえないようなコストの高い電源開発計画とは両立しえない。電発はコスト面で問題のある徳山ダム事業計画からは早期に撤退するべきだと考えるが、いかがか。
 右質問する。