平成十二年七月十一日受領
答弁第七号

  内閣衆質一四八第七号
  平成十二年七月十一日

内閣総理大臣 森   喜  朗

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員石井紘基君提出徳山ダムによる発電に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


衆議院議員石井紘基君提出徳山ダムによる発電に関する質問に対する答弁書

一について

 電源開発株式会社(以下「電発」という。)の平成十一年度の供給計画によれば、徳山発電所の工事費(徳山ダム建設費の電発の負担分を含む。)の概算額は千百九十六億八千万円となっており、また、中部電力株式会社(以下「中電」という。)の同年度の供給計画によれば、杉原発電所の工事費(杉原ダム建設費を含む。)の概算額は三百五十五億円となっており、合計千五百五十一億八千万円となる。
 徳山発電所及び杉原発電所の工事費の概算額を両発電所の出力で除すると、キロワット当たり約三十五万円となる。
 全国の発電方式別の電源開発単価の実績及び現状については、平成十一年十二月十六日の第七十回総合エネルギー調査会原子力部会に提出した「原子力発電の経済性について」と題する資料の基となった実際の発電所の建設費用を基に計算すると、いずれもキロワット当たり、自流式の一般水力にあっては七十五万七千円、LNG火力にあっては二十万三千円、石油火力にあっては二十八万四千円、石炭火力にあっては三十万三千円、原子力にあっては二十九万千円であり、また、平成十二年一月二十七日の第二回総合エネルギー調査会新エネルギー部会に提出した「新エネルギーの潜在性と経済性」と題する資料によれば、いずれもキロワット当たり、住宅用の太陽光にあっては九十五万円、公共施設等用の太陽光にあっては百十万円、自家消費用の風力にあっては二十五万円、売電事業用の風力にあっては二十二万円、廃棄物にあっては三十万円、天然ガスコジェネレーションにあっては三十万円、リン酸型の燃料電池にあっては七十五万円となっている。なお、地熱、リン酸型以外の燃料電池並びに揚水式及び混合揚水式の水力については、調査した限りでは現に資料が存在しない。

二の1について

 現在建設中の純揚水式発電所の平均建設単価は、キロワット当たり二十万円程度と言われているが、徳山発電所は混合揚水式であり、一についてで述べた徳山発電所の電源開発単価と、純揚水式発電所の電源開発単価を単純に比較することは適当ではないと考えている。
 また、徳山発電所及び杉原発電所の両発電所は、中電による平成二十年度以降の電力の供給に必要なものであり、両発電所を建設する意義は十分あるものと考えている。

二の2について

 中電を含め、各電力会社がいかなる電源を選択するかは、当該会社の経営判断によるものであり、政府として答弁する立場にないが、一般に、各電力会社は、電源の選択を行うに際しては、経済性だけでなく、運転特性、環境特性、供給安定性等を総合的に勘案して判断しているものと認識している。

三について

 世界自然保護基金の発表によれば、標準的な石炭火力発電所の二酸化炭素排出量はキロワットアワー当たり千グラム程度であるところ、これに比べ、水力発電については、風力発電と同様に、火力発電と比較して二酸化炭素排出量の少ないクリーンな自然エネルギーであることなどから、環境保全に配慮しつつ開発を進めることが重要であり、徳山発電所及び杉原発電所についても、環境保全に配慮しつつ、その建設事業を実施することが必要であると認識している。
 なお、徳山ダムについては、建設事業を実施する水資源開発公団(以下「公団」という。)が平成十一年十二月に公開した「徳山ダムワシタカ類に関する資料」と題する資料によれば、イヌワシ及びクマタカの行動圏には、徳山ダムの建設事業に係るダム湖、たん水域、道路等として地形が改変される区域が含まれるが、公団においては、徳山ダム環境保全対策委員会を設立し、同委員会を中心に専門家の指導及び助言を得ながら、環境保全対策等に万全を期して徳山ダムの建設工事を実施しているところであると承知しており、今後とも環境保護について適切な対応が図られていくものと考えている。

四の1について

 徳山発電所で発電される電力は全量中電に供給されるという電発と中電との間の基本的な契約の下で、徳山発電所及び杉原発電所の建設事業が進められてきたものと承知しているが、供給される電力の料金については明確には定められておらず、また、損害賠償の範囲等については定められていないと承知している。

四の2から4までについて

 お尋ねは、仮定の問題であり、また、個別の電力会社の経営判断にかかわる事柄であるので、答弁を差し控えたい。
 なお、資源エネルギー庁においては、徳山発電所及び杉原発電所の事業が適切に行われるよう注視してまいりたい。

四の5について

 徳山発電所の建設事業への電発の参加は、電発の経営判断に基づきなされたものであり、同事業への参加が経営に悪影響を及ぼすことのないよう、電発において最善の努力がなされるものと理解している。