平成十二年九月一日受領
答弁第五号
内閣衆質一四九第五号
平成十二年九月一日
衆議院議長 綿貫民輔 殿
衆議院議員石井紘基君提出超低公害新自動車燃料「ガイアックス」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員石井紘基君提出超低公害新自動車燃料「ガイアックス」に関する質問に対する答弁書
一について
平成十二年四月二十一日、環境庁長官から中央環境審議会に対して自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(平成四年法律第七十号。以下「特別措置法」という。)の改正も含めた今後の自動車排出ガス総合対策の在り方について諮問を行い、現在、同審議会において本年内の取りまとめを目指して審議が行われているところであり、政府としてはその結論を踏まえ対処したい。
自由民主党においては、平成十二年四月二十七日、政務調査会の交通部会、環境部会、商工部会及び建設部会の四部会の代表で構成されたディーゼル車の排気ガス対策プロジェクトチームにおいて、ディーゼル自動車に起因する窒素酸化物排出量の低減対策を強化するとともに、新たに粒子状物質の排出対策を実施するため、来年の通常国会において特別措置法について所要の見直しを行うことが取りまとめられたところである。
また、本年六月の中央環境審議会において、日本自動車工業会等の関係団体の意見を聴取したところ、日本自動車工業会は「大気環境の抜本的な改善には単体対策に加え、環状道路整備、物流効率化、整備不良車の取締強化、違法駐車の排除等の総合的・長期的な対策が必要ではあるが、早期の改善を目的とした法改正は緊急避難措置としてやむを得ない。自動車メーカーは、粒子状物質低減車の自主供給計画の策定等、大気環境改善に積極的に努力する。」との考え方を、また、石油連盟は「日本自動車工業会と、ディーゼル自動車の排出ガス低減対策の緊急性及び社会的要請に応えるため、両業界が密接な連携をとることでより効果的な対策が可能となるよう、現状において最大限の努力を傾注することとする。」との考え方を表明している。
二について
地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の規定により、燃料炭化水素油については、特約業者、元売業者又は石油製品販売業者が自動車の内燃機関の燃料として販売した場合には、その販売量を課税標準として軽油引取税がこれらの者に課されることとされている。
また、自動車の保有者が燃料炭化水素油を自動車の内燃機関の燃料として消費した場合においては、当該燃料炭化水素油に販売の段階で軽油引取税が課されている場合を除き、当該燃料炭化水素油の消費に対し、その消費量を課税標準として、軽油引取税が自動車の保有者に課されることとされている。
この場合の燃料炭化水素油とは、炭化水素油(炭化水素とその他の物との混合物又は単一の炭化水素で、一気圧において温度十五度で液状であるものを含む。)で軽油又は揮発油(揮発油税法(昭和三十二年法律第五十五号)及び租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)において揮発油とみなされるものを含む。)以外のものであり、炭化水素を主成分としないものも含まれる。
御指摘の「ガイアックス」についても、燃料炭化水素油に該当し、自動車の内燃機関の燃料として販売又は消費した場合には、軽油引取税が課されることとなる。
なお、アルコール系燃料とされる「ガイアックス」については、ガソリンに代えて自動車の内燃機関の燃料として使用した場合に自動車排出ガス中の一酸化炭素及び炭化水素をある程度低減させるとの情報が存在するが、窒素酸化物その他の有害物質の排出状況については明らかでなく、また、「ガイアックス」の自動車部品の耐久性に及ぼす影響も明らかでない。
このように「ガイアックス」については、環境保全上の効果及び自動車の安全性への影響が必ずしも明らかではないことから、政府としては、今後必要な情報収集等を行っていきたいと考えている。
三について
政府においては、環境負荷の少ない自動車いわゆる低公害車の普及を推進するため、低公害車の一つであるメタノール自動車の導入及びメタノールの供給設備の設置に対して補助を行っているが、二についてで述べたとおり、「ガイアックス」については、環境保全上の効果及び自動車の安全性への影響が必ずしも明らかではないことから、政府としてはまずは必要な情報収集等を行っていきたいと考えている。
また、今後、環境に配慮した商品のうちどのようなものに補助又は助成を行うかについては、環境保全上の効果や普及の必要性等に応じて個別に判断すべきものと考えている。
四について
御指摘の「M85」はアルコール系燃料であるが、揮発油の製造場において揮発油にアルコールを混和して製造されていることから、揮発油税法第六条の規定により揮発油とみなされるものである。しかしながら、「M85」については現在、自動車燃料用メタノールの開発のための試験研究の用のみに供されていること等にかんがみ、揮発油税を課税しないものとして取り扱っているところである。
大気汚染に関する自動車排出ガス対策のように、排出源が多数存在しており、排出削減に向けた継続的なインセンティブが必要な問題に対して、税制上の措置を検討するに当たっては、国及び地方の環境政策全体の中での税制の具体的な位置付けを踏まえながら、我が国の経済活動に対する影響や国内外における議論の進展を注視しつつ、環境負荷の原因者に対して負担を求めるべきという環境政策における原則を基本として、幅広い観点から検討を行うべきものと考えている。
五について
一般的に環境への負荷の少ない商品の普及を図ることは、環境保全上重要であり、燃料についても例外ではないが、二についてで述べたとおり、「ガイアックス」については、環境保全上の効果及び自動車の安全性への影響が必ずしも明らかでないことから、政府としてはまずは必要な情報収集等を行っていきたいと考えており、御指摘のような特例的な課税は現段階では考えていない。