平成十二年九月十九日受領
答弁第一○号
内閣衆質一四九第一○号
平成十二年九月十九日
衆議院議長 綿貫民輔 殿
衆議院議員石井紘基君提出徳山ダム建設事業地域に棲息する大型猛禽類に関する質問主意書に対する答弁書(内閣衆質一四七第一三号)に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員石井紘基君提出徳山ダム建設事業地域に棲息する大型猛禽類に関する質問主意書に対する答弁書(内閣衆質一四七第一三号)に関する質問に対する答弁書
一について
お尋ねのイヌワシDつがいを含む徳山ダム周辺のイヌワシ及びクマタカの保全対策(以下「保全対策」という。)の基本的な方向については、平成十二年二月に水資源開発公団(以下「公団」という。)が公表した「徳山ダム周辺の希少猛禽類とその保全」(以下「公表資料」という。)の中で、「事業が及ぼす影響への対策」として示されている。
公表資料によれば、公団は、猛禽類の専門家を含む徳山ダム環境保全対策委員会を設立し、総合的、具体的かつ効果的な保全対策の検討を行うとともに、徳山ダム完成後を含めた中・長期的な影響に対する保全対策として堤体材料採取箇所の変更、道路計画の見直し等の措置を、また、ダム建設中に発生する短期的な影響に対する保全対策として徳山ダムの建設事業(以下「事業」という。)に関連すると考えられるイヌワシ又はクマタカの各つがいを対象とする営巣確認調査の実施を含むモニタリングの強化、繁殖状況に応じた工事実施工程の調整等の措置を講ずることとされている。
これを踏まえて、公団は、本年四月二十四日、徳山ダムの本体工事起工式に先立って、徳山ダム環境保全対策委員会を設置するとともに、堤体材料採取箇所の変更、イヌワシ及びクマタカの繁殖行動のモニタリング等の措置を講じてきたところである。
公表資料に示された保全対策の基本的な方向については、環境庁が平成八年八月に策定した「猛禽類保護の進め方」で示している基本的な考え方と整合するものであり、おおむね適切なものと判断している。
また、公団が実施している繁殖行動のモニタリングのうち、工事の影響が繁殖期の行動範囲に及ぶと考えられるイヌワシ及びクマタカの各つがいに係るものについては、調査内容を引き続き充実させて実施することにより、工事実施工程の調整等に反映させていくことが必要であると認識しており、今後、必要に応じ、公団に対して助言等を行ってまいりたい。
二について
公表資料によれば、徳山ダムの集水区域と隣接する下流域をほぼ包含する範囲内において十七つがいのクマタカの生息が確認されている。公団が事業により自然が改変される区域を中心に選定した観察地点において実施したクマタカの飛翔等に関する調査の結果や営巣の状況に照らせば、これら十七つがいのうち、公表資料の五十ページに示されているA、A3、B、D、F、G、I及びKの八つがいについては、事業に係るダム堤体、湛水域、道路等として地形及び植生が改変される区域がその繁殖期の行動圏の中に含まれており、影響の程度に違いはあるものの、繁殖活動等に事業の影響が及ぶ可能性があると考えられる。
残りの九つがいのクマタカについては、事業に伴い地形及び植生が改変される区域はその生息域と考えられる区域の一部に限られることを勘案すれば、繁殖活動等に対する事業の影響は全般的にみれば先の八つがいより小さいものと考えられる。
したがって、先の答弁書(平成十二年四月二十一日内閣衆質一四七第一三号。以下「答弁書」という。)の三の1についてにおいて、事業がこの地域に生息するクマタカ個体群すべてに甚大な影響を与えるものとは考えられない旨をお答えしたものである。
なお、答弁書の三の2についてにおいては、御指摘の平成八年から平成十一年までの間のクマタカの繁殖数の推移とダム関連工事との因果関係は明らかでない旨をお答えしたものである。
三について
環境基本法(平成五年法律第九十一号)第八条第四項においては、事業者は、その事業活動に関し、これに伴う環境への負荷の低減その他環境の保全に自ら努める責務を有すると規定されており、各種開発行為に伴う猛禽類の保護対策は、事業者の責務として、各開発事業者が主体となって実施することが基本になると考えている。環境庁においては、公団から、一についてで述べたような保全対策を講ずるとともに、今後とも徳山ダム環境保全対策委員会等を通じて専門家の指導及び助言を得ながら効果的な保全対策及び調査研究を推進していくとの説明を受けており、今後、猛禽類の保護対策上必要と判断される場合には、公団に対して助言等を行ってまいりたい。